ファクタリングとでんさいの違い|仕組み・手数料・選び方を徹底比較

「ファクタリングとでんさい、どちらが自社に合っているのか?」——資金調達の手段を検討するとき、この疑問を持つ経営者は少なくありません。どちらも売掛金や債権を活用した資金化の方法ですが、仕組み・コスト・利用条件は大きく異なります。

この記事では、ファクタリングとでんさい(電子記録債権)の違いを分かりやすく整理し、自社にとってどちらが最適かを判断するためのポイントを解説します。

ファクタリングの基本的な仕組みについてはファクタリングとは?仕組み・メリット・注意点をわかりやすく解説もあわせてご確認ください。

でんさい(電子記録債権)とは

でんさいの仕組み

でんさいとは、全国銀行協会が設立した「でんさいネット(株式会社全銀電子債権ネットワーク)」を通じて取り扱われる電子記録債権のことです。従来の手形や売掛金に代わる新しい決済手段として、2013年にサービスが開始されました。

電子記録債権法に基づいて運用されており、債権の発生・譲渡・消滅がすべて電子的に記録されます。紙の手形と異なり、紛失や盗難のリスクがなく、分割譲渡も可能です。

でんさいの基本的な流れ

  1. 債権の発生: 取引先(支払企業)がでんさいネット上で債権を発生記録
  2. 債権の保有: 納入企業(債権者)がでんさいネット上で債権を確認・保有
  3. 資金化: 支払期日に自動的に口座に入金。または支払期日前に「でんさい割引」で資金化
  4. 譲渡: 必要に応じて第三者に電子的に譲渡可能

でんさいの利用条件

でんさいを利用するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 取引先もでんさいネットに加入していること(双方の参加が必須)
  • でんさいネットの参加金融機関に口座を持っていること
  • 金融機関を通じた利用申込が完了していること

この「取引先も加入が必要」という条件が、でんさい普及の最大のハードルとなっています。

ファクタリングとでんさいの違い

ファクタリングとでんさいの違いを一覧で比較すると、以下のようになります。

比較項目ファクタリングでんさい(電子記録債権)
仕組み売掛債権の売却(債権譲渡)電子記録された債権の割引・譲渡
法的根拠民法(債権譲渡)電子記録債権法
資金化スピード即日〜数日割引の場合、申込から数日〜1週間
手数料1%〜20%程度(債権額面に対して)年利1%〜5%程度(銀行の割引料率)
審査対象売掛先の信用力が中心自社の信用力が中心
取引先への通知2社間なら不要取引先の加入が前提
利用条件売掛債権があれば利用可能取引先もでんさいネット加入が必要
導入ハードル低い(Web完結のサービスも多い)やや高い(金融機関経由の手続き必要)
対象企業中小・零細・個人事業主にも対応主に中堅〜大企業向け
返済義務なし(ノンリコースの場合)割引の場合、不渡り時に買戻し義務あり

仕組みの違い

ファクタリングは、保有している売掛債権をファクタリング会社に売却して資金化する方法です。民法上の債権譲渡に基づいており、特別な法制度やインフラへの加入は不要です。

一方、でんさいは電子記録債権法に基づく制度的な仕組みです。でんさいネットという共通インフラ上で債権が管理されるため、取引の透明性と安全性は高いものの、利用には取引先を含めた準備が必要になります。

手数料・コストの違い

コスト面では、でんさいの方が有利な場合が多いです。でんさい割引の料率は銀行の融資金利に近い年利1%〜5%程度であるのに対し、ファクタリングの手数料は債権額面の1%〜20%と幅が広く、特に2社間ファクタリングではコストが高くなる傾向があります。

ただし、ファクタリングの手数料は売掛先の信用力やファクタリング会社によって大きく異なります。OLTA株式会社のようなオンライン完結型サービスでは、2%〜9%と比較的低い手数料で利用できるケースもあります。

2社間・3社間の手数料の違いについては、2社間と3社間ファクタリングの違いで詳しく解説しています。

審査基準の違い

審査の考え方も大きく異なります。

ファクタリングの審査: 売掛先(取引先)の信用力が重視されます。自社が赤字決算や税金滞納の状態でも、売掛先の支払能力が確認できれば利用可能なケースがあります。

でんさい割引の審査: 自社の信用力が審査の中心です。銀行融資と同様に、財務状況や信用情報が審査されるため、業績が不安定な企業にとってはハードルが高くなります。

取引先への影響

ファクタリングの大きなメリットは、2社間ファクタリングを選べば取引先に知られずに利用できる点です。資金調達の事実を取引先に伝えたくない場合に適しています。

でんさいの場合、取引先がでんさいネットに加入していることが大前提です。つまり、取引先に「でんさいで支払ってほしい」と依頼する必要があり、取引先の協力が不可欠です。

どちらを選ぶべきか

ファクタリングが向いているケース

  • 急ぎの資金調達が必要:即日〜数日で資金化できるスピードが必要な場合
  • 取引先に知られたくない:2社間ファクタリングなら通知不要
  • 自社の信用力に不安がある:赤字・税金滞納中でも売掛先の信用力で利用可能
  • 取引先がでんさいに未対応:相手が中小企業で電子記録債権に対応していない場合
  • 初めて売掛金を資金化する:Web完結で手続きが簡単なサービスが多い

でんさいが向いているケース

  • コストを最小限に抑えたい:割引料率が銀行融資に近い低水準
  • 取引先が大企業ででんさい対応済み:すでにインフラが整っている場合
  • 継続的な資金化を計画:定期的な取引でコストメリットが大きくなる
  • 自社の信用力が十分にある:銀行審査をクリアできる財務状況
  • 債権の分割管理が必要:一部のみ資金化するなど柔軟な運用が可能

判断のフローチャート

資金調達の方法を選ぶ際は、以下の順序で検討すると判断しやすくなります。

  1. 取引先がでんさいネットに加入しているか? → 未加入ならファクタリング一択
  2. 資金化のスピードは重要か? → 即日〜数日が必要ならファクタリング
  3. 取引先に知られたくないか? → はい→ファクタリング(2社間)
  4. コスト最優先か? → はい→でんさい割引を検討
  5. 自社の信用力は十分か? → 不安あり→ファクタリングの方が通りやすい

ファクタリングとでんさいの併用

ファクタリングとでんさいは、排他的な関係ではありません。取引先や状況に応じて使い分けることが可能です。

併用のパターン

  • でんさい対応の大企業にはでんさい割引: コストが低く、継続利用に向いている
  • でんさい未対応の中小取引先にはファクタリング: 取引先の準備が不要
  • 急ぎの場面ではファクタリング: でんさい割引よりもスピーディーに対応可能

併用時の注意点

同一の債権を二重に資金化することはできません。でんさいとして記録された債権をファクタリングに出す場合や、その逆の場合には、債権の管理を正確に行うことが重要です。

よくある質問(FAQ)

Q1. でんさいとファクタリング、手数料が安いのはどちらですか?

A. 一般的にはでんさい割引の方が低コストです。でんさい割引は年利換算で1%〜5%程度であるのに対し、ファクタリングは取引ごとに1%〜20%の手数料がかかります。ただし、ファクタリングは売掛先の信用力次第で低い手数料が適用されることもあるため、見積もりを比較して判断するのが賢明です。

Q2. 取引先がでんさいに対応していない場合はどうすればよいですか?

A. 取引先がでんさいネットに加入していない場合、でんさいは利用できません。この場合はファクタリングが有力な選択肢です。取引先への通知が不要な2社間ファクタリングを利用すれば、取引先に負担をかけることなく資金化が可能です。

Q3. 個人事業主でもでんさいを利用できますか?

A. でんさいネット自体は個人事業主でも利用可能ですが、でんさい割引(支払期日前の資金化)を受けるには金融機関の審査が必要です。個人事業主の場合、審査のハードルが高い傾向にあるため、ファクタリングの方が利用しやすいケースが多いでしょう。freenanceなど個人事業主向けのサービスも充実しています。

Q4. でんさいの「不渡り」リスクとは何ですか?

A. でんさい割引を利用して支払期日前に資金化した場合、支払企業が期日に支払いを行わない(不渡り)と、割引を受けた側に買戻し義務が生じます。一方、ノンリコース型のファクタリングでは、売掛先が倒産しても利用者に返済義務はありません。これは両者の大きな違いです。

まとめ

ファクタリングとでんさいは、どちらも売掛金や債権を活用した資金調達手段ですが、それぞれに明確な特徴があります。

  • ファクタリング: スピード重視、取引先への通知不要(2社間)、自社の信用力が低くても利用可能
  • でんさい: コスト重視、取引先の加入が必要、自社の信用力が審査対象

最も重要なのは「取引先がでんさいに対応しているかどうか」という前提条件です。対応していなければファクタリング一択ですし、対応していてもスピードや秘匿性を重視するならファクタリングが適しています。

自社の状況に合った方法を選び、必要に応じて併用することで、より柔軟な資金繰りを実現しましょう。

出典・参考文献

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品・サービスの利用を推奨するものではありません。でんさいの利用条件や手数料は金融機関ごとに異なります。また、ファクタリングの手数料・審査基準もサービス提供会社によって異なります。具体的な資金調達に関しては、金融機関やファクタリング会社、税理士等の専門家にご相談ください。